偉大な科学者の名を冠するもう1つの電気自動車会社
- 2015年07月19日
- テスラモーターズ
イーロン・マスクがCEOを務める電気自動車会社テスラモーターズ。会社の名前は天才科学者のニコラ・テスラに由来します。イーロン・マスクは約1億円をニコラ・テスラ博物館に寄付していますし、テスラモーターズが使っている技術の基礎を築いたのもニコラ・テスラ。テスラモーターズがニコラ・テスラの名前を冠するのも納得できますね。
テスラモーターズはシリコンバレーの気風を備えた新しい自動車会社として既存の大手自動車メーカーに正々堂々技術で勝負を挑み、電気自動車の市場ではトップクラスの実績をあげてきました。
じつは最近、そんなテスラの軌跡を追うようなもう1つの新しい電気自動車会社がシリコンバレーに登場して話題になっています。その名もファラデー・フューチャー。偉大な科学者であるマイケル・ファラデーをその名に冠する謎に包まれた会社です。ファラデー・フューチャーのサイトを見ても具体的なことはほとんど書いてありません。ただ、このような刺激的な文章が記載されていました。
インターネットが登場する以前の世界を覚えているでしょうか。覚えていないに違いありません。すべてを変えてしまうイノベーションというものがあるのです。そして、ファラデー・フューチャーは自動車産業全体を未来へと導く存在なのです。
シリコンバレーに蘇った2人の科学者〜ニコラ・テスラ〜
テスラモーターズの名前の由来となっているニコラ・テスラ(1856年7月10日〜1943年1月7日)は発明王エジソンの最大のライバルとして有名です。電流戦争と呼ばれる送電システムをめぐる争いで両者は激しく剣を交えました。ニコラ・テスラは交流送電、エジソンは直流送電を主張。ナイアガラの滝を利用したテスラの発電所がターニングポイントとなり、結果はニコラ・テスラに軍配が上がりました。現在でもほとんどの国々で交流送電が採用されています。
ニコラ・テスラは奇行が目立ちマッド・サイエンティストとしても名を馳せていますが、その能力・実績は凄まじく、現在では磁束密度の単位としてテスラの名が使われています。8ヶ国語を操り、様々な分野に精通していました。
シリコンバレーに蘇った2人の科学者〜マイケル・ファラデー〜
マイケル・ファラデー(1792年9月22日〜1867年8月25日)はイギリスの自然哲学者(化学・物理学者)です。電磁気によって動作する装置である電動機を発明して人類の文明の発展に大きく寄与しました。電気を使ったテクノロジーの発展は彼の業績によるところが大きいのです。
ファラデーは学校にほとんど通うこともなく、高度な数学の知識がないにもかかわらず、人類にもっとも影響を与えた科学者の1人だと言われています。科学者ではありますが、その出自のため不遇な扱いをうけた人生でした。
ファラデーは数々の実験によって偉大な発見を繰り返す徹底した実験主義者でした。ファラデー・フューチャーのサイトでは彼についてこのように言及しています。
アルベルト・アインシュタインはマイケル・ファラデーの絵を(アイザック・ニュートンと共に)壁にかけて革新のためのインスピレーションとしていました。電磁気モーターと電気化学バッテリーの父として、ファラデーは圧倒的に時代に先駆ける男だったのです。
ファラデー・フューチャー
テスラモーターズが科学者ニコラ・テスラの名を冠してシリコンバレーに颯爽と登場した電気自動車会社であるように、ファラデー・フューチャーも科学者マイケル・ファラデーの名を冠してシリコンバレーに登場した新しい電気自動車会社です。
現在のところその全貌は謎に包まれていて詳しいことはわかっていません。ただ、ファラデー・フューチャーが騒がれている理由は彼らが引き抜いた人材の豪華さにあります。たとえば以下のような人物がファラデー・フューチャーで働いているのです。
Nick Sampson:前テスラモデルSのエンジニア
Richard Kim:前BMW i8、i3のコンセプトデザイナー
Pontus Fontaeus:前ランボルギーニmフェラーリ、ランドローバーのインテリアデザイナー
Page Beermann:前BMWのデザイナー
Porter Harris:前スペースX社員
現在は200人のスタッフが在籍していて、2016年までに300人まで人数を増やす予定とのこと。また、彼らの最初の自動車は2017年に完成予定だそうです。上記の人材を引き抜ける魅力がある会社ということでかなり期待されています。
イーロン・マスクにとってのファラデー・フューチャー
同じシリコンバレーの電気自動車会社としてテスラモーターズのライバルになりそうなファラデー・フューチャーですが、イーロン・マスクはどのように受け止めるのでしょうか。
じつは、ファラデー・フューチャーが志向している電気自動車は高級車だそうです。テスラモーターズが狙っているのはマスマーケット。つまり、庶民的な電気自動車を目指しています。テスラの戦略として現在は高級車を生産していますが、イーロン・マスクは電気自動車市場の拡大に熱心であり、あくまでもターゲットはマスマーケットなのです。
理由は人類を化石燃料依存から脱却させるために電気自動車社会の到来を加速させることがテスラモーターズの存在意義だから。そのために、イーロン・マスクはテスラの特許も開放して電気自動車会社設立を促しています。
つまり、ターゲット層も異なるうえに、そもそも電気自動車会社が増えることは大歓迎なイーロン・マスクなので、きっとファラデー・フューチャーにたいしてもポジティブな思いを抱いているはずですね。
まとめ
イーロン・マスクにとって重要なのはガソリン車対電気自動車の戦いのほうでしょう。イーロン・マスクは電気自動車全般を応援しているのです。2015年7月17日、イーロン・マスクはテスラのサイトで電気自動車のコストについてこのように述べています。
多くの国で、クリーンなエネルギーを使う自動車への補助金が給付されています。つまり、電気自動車のコストはそれだけ下がっているのです。たとえば、アメリカではモデルSの価格は補助金を加味すると750万円ほどになります。(※)また、ガソリンを購入しなくてよかったり、電気自動車にかかる手間が少なかったりするため、年間25万円は節約できます。平均的に言えば、5年間で125万円の節約になるのです。ガソリン車対電気自動車の評価において、この経済的優位性はしばしば見過ごされています。
しばしば高コストがネックとされる電気自動車ですが、補助金や維持費なども考えてガソリン車と対比させてほしいということですね。電気自動車は正当な評価を受けるべきだとイーロン・マスクは言っているわけです。
環境問題への世界的な取り組みから、電気自動車への流れは確実なものとなってきています。イーロン・マスク率いるテスラモーターズが先頭となり、新しく登場する電気自動車会社を引っ張っていく姿が頼もしい限りです。