イーロン・マスクのすすめ

スペースXの打ち上げ失敗の原因はパーツの欠陥と慢心だった

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6月28日、イーロン・マスクの誕生日に打ち上げられたスペースXのファルコン9は打ち上げから139秒後に爆発してしまいました。

打ち上げ失敗のあと、スペースXを率いるイーロン・マスクツイッターで爆発の原因について暫定的な回答を近々発表すると宣言。現在も調査は続けられていますが、今回、イーロン・マスクは、ロケットの上昇中にヘリウムボトルを固定する支柱が壊れたことが爆発の原因である可能性が高いと電話会談で語りました。現在のところ、それ(原因が支柱であること)以外に説得力のある説明が見当たらないとのことです。




ファルコン9はどのように爆発したのか

ヘリウムボトルを固定する支柱はスチール製で長さ約60センチメートル。ロケット二段目の液体酸素タンク内に備えつけられていました。ボトル内のヘリウムは極低温・高圧で保存されています。ロケットの飛行で燃料が消費されるにつれてヘリウムが推進剤のタンクへと送られます。ヘリウムをタンクへ送ることで圧力をかけ、タンクの構造的安定性の維持に貢献するというわけです。

打ち上げ後、支柱が外れたことでヘリウムボトルが飛び出して液体酸素タンクに干渉しました。この原理はスイミングプールの水面に膨らんだビーチボールが(水中から)飛び出してくるのと同じだとイーロン・マスクは言います。さらに大量のヘリウムが液体酸素タンクに流れ込み、結果的に液体酸素タンク内の圧力超過が発生してロケットの爆発へとつながりました。

支柱にトラブルが発生したのはまだロケット一段目の燃焼中でした。つまり、発生箇所である二段目エンジンはまだ点火していなかったということです。ファルコン9のような二段ロケットは一段目エンジン燃焼終了後に一段目を切り離し、二段目エンジン点火というシーケンスを辿ります。二段目エンジンの点火に至っていなかったので、二段目の推進剤タンクは満タンだったということです。高い圧力がかかった状態のタンクにヘリウムが流れ込みさらに圧力を高めてしまったわけですね。




ファルコン9の爆発を引き起こした支柱

スチール製の支柱は重さ約4・5トンに耐えれるはずでしたが、問題があったとされる支柱はその5分の1にあたる約0・9トンで壊れてしまいました。イーロン・マスクは「本来このレベルの力で壊れるようなものではない」、「製造に問題があったのだろうが、外から判別はできない」とコメント。

スペースXがおこなった素材分析の結果、スチールの粒状構造に欠陥が発見されました。正しく鋳造されなかったのでしょう。支柱は外注によるものでスペースXで製造されたわけではありません。スペースXではロケット、エンジン、カプセルなどを自身の工場で生産していますが、様々なパーツの供給を多くの製造業者に頼っています。今後、支柱の外注先を変更し、スペースXにて個別にテストをおこなうことになるそうです。

今回の打ち上げ前にも支柱の強度を計るテストは実施されていましたが、地上のテストでは上昇中のロケットの状況を再現できないため、支柱の強度不足を事前に察知することは不可能だったとのことです。

宇宙船ドラゴン

ファルコン9は国際宇宙ステーションへ貨物を運ぶために宇宙船ドラゴンを搭載していました。じつは、ドラゴンはロケットの爆発に巻き込まれることなく、爆発後も地上管制へデータを送り続けました。最終的には大西洋の海面へ激しく落下することになりましたが、ドラゴンはほとんど元の形状をとどめたまま海底へ沈んでいる可能性が高いとのことです。

ドラゴンには国際宇宙ステーションへの物資補給ミッションの完了後、地球へ帰還できるようにパラシュートが装備されています。もしドラゴンに搭載されていたソフトウェアが早期にパラシュートを開かせていたら、ドラゴンは爆発から無傷で生還できたようです。「非常に悲しいことだ。ほんのわずかに異なるソフトウェアだったらドラゴンは無事だっただろう。」イーロン・マスクはそう語りました。今後はそのようなソフトウェアがドラゴンにインストールされるそうです。




打ち上げ失敗の影響

スペースXの次の打ち上げは9月以降まで延期。今回の打ち上げ失敗によるスケジュールの変更でスペースXが被った損害は数百億円にのぼるとされています。また、火星を目指して設計されるファルコンヘビーの打ち上げ時期にも影響を与えたとのことです。

NASAとの有人宇宙飛行契約を結んでいるスペースXは有人宇宙船ドラゴンを開発しています。イーロン・マスクによれば、有人宇宙船には非常事態の際の脱出システムが備えられているので、今回のような爆発が起きた場合でも無事に帰還できたはずとのこと。ちなみに、有人宇宙飛行のスケジュールの遅れはないそうです。

スペースXの慢心

2015年6月まで、ファルコンロケットは18回連続で打ち上げに成功していました。そして、スペースXの社員は創業初期の500人から4000人へ。「現在、非常に多くの社員は成功しか目にしていない。成功だけを見てきたら、失敗を恐れなくなってしまう。」イーロン・マスクは言います。

過去7年間ではじめての失敗となった今回のファルコン9の爆発。イーロン・マスクは毎回打ち上げ前に全社にEメールを送信し、社員に打ち上げを延期すべき事由があれば自分に教えてくれるように頼むそうです。彼は「偏執的だと思われていることを理解している」そうですが、今回の失敗で「すべての社員がロケットを成功裏に軌道へ乗せることがいかに難しいことなのかわかってくれたと思う」、「重要な教訓となった」と語りました。

参考

www.space.com

www.sci-tech-today.com

www.coastreporter.net

www.themarketbusiness.com

www.planetary.org

Support strut probable cause of Falcon 9 failure | Spaceflight Now

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