スペースXの打ち上げ失敗についてイーロン・マスクが語ったこと
スペースXの打ち上げ失敗について、イーロン・マスクがISS R&D(国際宇宙ステーション研究開発)カンファレンスで語った内容をまとめます。
イーロン・マスクの感想
スペースXのファルコン9(19号機)が打ち上げられたのは6月28日です。この日はイーロン・マスクの44歳の誕生日でもありました。彼は今回の失敗で「本当に落ち込んだ」と言います。
スペースXにとって大打撃でした。私たちはこのミッションをきわめて深刻にとらえています。
Cause of blast still eludes SpaceX – IOL SciTech
有人宇宙飛行も迫るなか、ロケットの信頼性は完璧なものを求められます。そして、ファルコン9は19回目の打ち上げにして、はじめて失敗したのです。イーロン・マスクが落ち込むのも無理はありません。
データの解析状況
打ち上げから139秒後に爆発してしまったファルコン9の19号機。現在のところ、爆発の原因は液体酸素タンクに圧力がかかり過ぎたことで、ロケット上段にトラブルが発生したためと考えられています。
しかし、明確なことは何もわかっておらず、スペースXは「超詳細なタイムライン」を「ミリ秒分のミリ秒」でまとめているそうです。
データ解析は非常に難しいようです。何が起きたのであれ、単純でわかりやすいものではありません。
Cause of blast still eludes SpaceX – IOL SciTech
スペースXは連邦航空局、NASAそしていくつかの顧客へ解析内容を提出する予定です。この難問を解くために外部の視点が助けになるかもしれないからです。
失敗の意味
イーロン・マスクはスペースX設立の目的を宇宙飛行のコストを劇的に下げるためだと語りました。そして、これまでスペースXがもたらした発展は「進化的でこそあれ、革命的ではない」とのこと。
スペースXはロケットの製造コストを大幅に下げましたが、イーロン・マスクの言う「革命的」なコストダウンのために、ロケットの再使用が計画されています。
19号機の打ち上げも順調にすすめばロケット一段目の着陸に挑戦する予定でした。一段目の着陸はロケット再使用を目的としたものです。一段目が着陸に成功して再使用が可能になれば、ロケットの費用の約3/4が節約できる見込みです。
ロケット一段目着陸の挑戦は過去に何度か失敗していますが、イーロン・マスクによれば、19号機の一段目着陸が今までのなかでもベストチャンスだったそうです。スペースXは一段目着陸に向けてギアを上げていたのですが、そのチャンスも19号機の爆発によって儚く散ってしまいました。
有人宇宙飛行を念頭に置いたロケットの信頼性と劇的なコストダウンを図るためのロケット再使用。その両方の視点から見て、19号機の打ち上げ失敗は非常に大きな痛手となりました。
今後の展望
イーロン・マスクは「性格的に(何かを)継続することには向いている」と言いますが、それでも失敗がこたえるのは当たり前。彼はこう語ります。
たしかに、物事がうまくいかないときはあって、とてもがっかりします。同じレベルの情熱を維持するのは難しい。
SpaceX’s Elon Musk Boston Speech at Space Station Conference | BostInno
19号機の打ち上げ失敗のような困難を迎えたとき、イーロン・マスクを突き動かす動機はスペースXやテスラが取り組んでいる事業の重要性だそうです。
スペースXでは人類を他惑星型の生物へ導くことを目標に、テスラでは環境の持続性を向上させることを目標にしています。これらはイーロン・マスクが考える人類のクリアすべき課題。彼はスペースXとテスラの人類の発展における重要性を少しも疑っていないのです。
人類にとって重要なことに挑戦しているという意識をモチベーションにひたすら前にすすむイーロン・マスク。週末までには19号機の失敗について何かしら明確なことを発表し、数ヶ月以内にはロケットの打ち上げに戻る予定だそうです。人類のために戦い続ける彼をこれからも応援していきたいですね。