イーロン・マスクが自動運転タクシー事業で狙っていること
- 2015年11月28日
- テスラモーターズ
Uberを運営するウーバー・テクノロジーズのCEOトラビス・カラニックは、もし2020年までにテスラが50万台の自動車を生産できたなら、そのすべての自動車を購入すると言いました。テスラ車が自動運転になっていることがその条件のようですが、ものすごい宣言ですよね。
Uberは簡単に言うとタクシーを手配してくれるアプリです。なので、現在の有人タクシーに代わり無人タクシー(自動運転タクシー)を配車できるようになればUberにとって非常に大きなメリットがあるわけです。
そして、自動運転へ邁進しているのがイーロン・マスク率いるテスラ。最近、イーロン・マスクはTwitterで自動運転のためのソフトウェアエンジニアを募集するツイートで世間を騒がせました。
全自動運転を普及させるため、テスラの自動運転ソフトウェアチームを増やす。興味があるならここへ。autopilot@teslamotors.com
Ramping up the Autopilot software team at Tesla to achieve generalized full autonomy. If interested, contact autopilot@teslamotors.com.
— Elon Musk (@elonmusk) 2015, 11月 20
筋金入りのソフトウェアエンジニアを探している。自動車(業界)での経験は不要。コードのサンプルか過去に作ったもののリンクを記載のうえ(連絡を)。
We are looking for hardcore software engineers. No prior experience with cars required. Please include code sample or link to your work.
— Elon Musk (@elonmusk) 2015, 11月 20
言っておかなければならないが、私が個人的に面接をするし自動運転のレポートを直接見せてほしい。これは超ハイプライオリティーなんだ。
Should mention that I will be interviewing people personally and Autopilot reports directly to me. This is a super high priority.
— Elon Musk (@elonmusk) 2015, 11月 20
ということで、自動運転車を望むトラビス・カラニックがテスラに言及するのもうなずけます。
テスラの戦略における自動運転タクシーの意味
さて、じつはテスラがUberのような配車サービスへ進出するのではないかという噂があります。イーロン・マスクは明言を避けていますが、テスラの目的を考えるとあり得る話だと思うんですよね。
テスラの目的は電気自動車を普及させて持続可能な交通機関の到来を早めること(accelerate the advent of sustainable transport)です。
しかし、このままだと電気自動車が普及した社会の到来はずいぶん先になりそう。地球上に存在するガソリン車はおよそ20億台で、毎年1億台の新車が生産されています。仮にテスラが電気自動車を年間50万台生産したとしても、生産量は全体の0.5%しかありません。これだと地球上のすべての自動車を電気自動車へ変えるにはどんなに早くても20年以上はかかる計算になります。
問題はこの「20年以上」をいかに短縮するかですね。
まず最初にみなさんが所有している自動車について考えてみましょう。自動車は非常に高価な製品です。ローンを組んで買う人も多いでしょう。でも、じつはせっかく自動車を購入しても実際は4%しか稼働していない状態だそうです。たしかに一日のうちそんなに自動車に乗る機会はないですよね。通勤で長くて1,2時間。あとは休日に遠出するときや買い物のときくらいでしょうか。平均すると1日24時間中1時間ほどになるんでしょう。
もし自動運転機能を搭載したタクシーをUberのようなサービスでいつでもどこでも安価に呼び出せるのであれば、人々が高いお金を払って自動車を所有する意味はなくなっていくはずです。よほどの車好き以外、自動車は使うためにあり、所有自体が目的ではないからです。ちなみに、Googleによれば自動運転タクシーの稼働率は75%以上になるだろうと予測されています。4%しか稼働していない現在の自動車と比べれば圧倒的な稼働率です。
そうなれば同じ人数を運ぶのに必要な自動車の台数が減らせることになります。自動運転タクシー普及の大事なポイントはここです。
Googleの自動運転プロジェクトの前リーダーであり現在はスタンフォード大学のコンピューターサイエンティストのSebastian Thrunによると、自動運転タクシーが普及すればいまの約30%の自動車台数で事足りるようになるとのことです。
また、リスボンで自動運転車をモデリングしたOECDの研究では、タクシボット(空港内で利用される電気自動運転車)のシェアによってじつに80〜90%の自動車を減らせるそうです。さらに、ユタ大学のDan Fagnantはオースティンとテキサスのトラフィックデータを用いて、1台の自動運転タクシーの利用が現在の10台の自動車相当の働きをするいう研究結果を出しています。
要するに、自動運転タクシーが普及すれば地球上の自動車総数を劇的に減らせるということです。
すべての自動車を電気自動車へ変えるには20年以上かかる。その理由は単純に生産される自動車全体のうち電気自動車生産の割合が小さかったからです。
では自動車全体の数が減少すればどうなるでしょう。
ウーバー・テクノロジーズCEOのトラビス・カラニックがその態度で示した通り、自動運転機能を備えた未来の自動車はテスラのような電気自動車です。
つまり、自動車総数の減少とともにガソリン車の需要が下がり、電気自動車の占める割合は大きくなる。
このように、自動運転タクシーの普及によって自動車総数(分母の数)を減らすことで、テスラの目的である電気自動車社会の到来を早めることが可能という理屈になります。
こう考えると、テスラが自動運転タクシー事業に乗り出すかもしれないという話も納得できると思いませんか。
テスラがやるかどうかは別にしても、自動運転タクシーの普及はテスラの戦略に組み込まれているはずです。狙いはもちろんテスラの目的を達成するため。うまい戦略だと思いますがいかがでしょう。