イーロン・マスクが第三次世界大戦を心配する理由
- 2015年12月15日
- イーロン・マスクについて, インタビュー, 火星
イーロン・マスクはGQのインタビューで「私たちは第三次世界大戦が発生する可能性があることを認識する必要があります。そして、もし第三次世界大戦が発生したなら、これはもう過去に起きたどんなことより悪い。」と述べ、第三次世界大戦についての懸念を表明しました。
さらに「たとえば核爆弾が使用されたとしましょう。きっとアンチテクノロジーへ向けた強力な社会運動が起こるでしょう。」と語りました。
第三次世界大戦というより、それによってテクノロジーの発展が遅れることをイーロン・マスクは気にしているようですね。インタビューの文脈的に、ここで言うテクノロジーとは火星への入植のためのテクノロジーのようです。つまり、彼が心配しているのは第三次世界大戦によって火星への入植が遅れることです。
イーロン・マスクが設立したスペースX社は安価な再使用可能ロケットを用いて火星へ大勢の人々を送り込むことを目的としています。つまり火星への入植を目指しているわけです。これは火星に自立した文明を築き、人類を多惑星にまたがる種にするためです。そのためにイーロン・マスクはスペースXに莫大な私財を投じて全力を尽くしているのです。
では、なぜイーロン・マスクはここまで火星への入植を望むのでしょうか。
ヒントは今回のインタビューのなかにあります。火星への入植の必要性について、イーロン・マスクは「あなたはHD(ハード・ドライブ)のバックアップをとりますよね」、「であれば、人類のバックアップもとるべきではないでしょうか?」と表現していました。
いきなりHDの話が出てきて戸惑うかもしれません。彼が何を言っているのか理解するのにおすすめの記事があるのでそこから引用してみたいと思います。事前に以下の2つの前提を頭に入れておいてください。
- 1) 記事は2015年8月に書かれたもの
- 2) 多細胞生物が現れたエディアカラン以降(約5億4200万年前以降)、現在までに生物の「大量絶滅」は5回発生している(※)
(※詳細が気になる方はWikipediaをご覧ください)
よろしいでしょうか?
では、以上の前提を踏まえてこちらの引用をご覧ください。
地球をHD(ハード・ドライブ)だと想像してみましょう。そして、私たちを含めた地球上の生物がExcelファイルです。このExcelファイルは膨大な情報をもつHD上に存在しています。ではここで私たちの時間感覚にあわせて5000年を一ヶ月に縮めて(地球の歴史を振り返って)みましょう。
・現在は2015年8月です。
・HD(地球)は7年6ヶ月前に誕生しました。2008年のはじめです。
・1年前の2014年8月にHD上にExcelファイルが作成されました(動物の誕生)。それから新しいExcelファイルが作成され続け、あるものはエラーを出して開かなくなりました(絶滅)。
・2014年8月から、HDは5回クラッシュしています(大量絶滅)。2014年11月と12月、2015年3月と4月、そして6月。HDはクラッシュしてから数時間後に再起動しましたが、再起動後は約70%のExcelファイルが失われていました。2015年3月のクラッシュを除いて、95%ものドキュメントが削除されていたのです。
・現在は2015年8月半ば。「人類」というExcelファイルが作成されたのは約2時間前のことです。
さぁ、あなたがとても重要なExcelファイルの入ったHDを所持していたとしましょう。そして、あなたはそのHDが高確率で1ヶ月か2ヶ月に一度クラッシュすることを知っています。前回のクラッシュは5週間前に発生しました。あなたが何をすべきか明らかですよね?
How (and Why) SpaceX Will Colonize Mars – Page 2 of 5 – Wait But Why | Page 2
いかがでしょう。「あなたが何をすべきか」の答えはもちろん「別のHDにExcelファイルのバックアップをとる」です。
「別のHD」とは火星のことで、「Excelファイルのバックアップをとる」は人類の入植を意味します。地球で大量絶滅が起きたとしても、火星に自立した文明が存在すれば人類滅亡は回避できます。
地球はクラッシュしやすいHDです。大切なドキュメントを保存しておくためには、一刻も早く別なHDにバックアップをとることが必要。これは誰が考えても納得できます。
つまり、火星への入植は人類という種の保存のためにきわめて重要だということです。そして、実現は早ければ早いほど良い。次のHDのクラッシュがいつ起こるかわからないのです。
そこでイーロン・マスクはこのバックアップ作業を最速でおこなっているわけです。いかなる理由であれ作業の遅延は許されない。そんな彼にとって(もちろん人類にとっても)第三次世界大戦は大きなリスクだということですね。
過去の大量絶滅を振り返ると人類がとても脆い存在だということがわかります。だから、イーロン・マスクは人類存続のためにやるべきことをやっている。HDの例をもちだし、火星入植の遅延を引き起こす第三次世界大戦を懸念するイーロン・マスクの気持ちが理解できる気がしますが、いかがでしょう。