イーロン・マスクが学校を設立した理由
中国のテレビ番組でインタビューを受けたイーロン・マスク。インタビューの中で、彼が学校を設立したという事実が明かされました。
学校の名前は「Ad Astra」。ラテン語で「星へ向かって」という意味です。イーロン・マスクらしいネーミングですね。現在のところ、小学生ほどの年齢の子どもたちが14名という規模で実験的に運用されています。秋には20人まで増えるようです。もちろんイーロン・マスクの5人の子どもたちも入学していますし、スペースXの社員の子どもたちも通っています。
「Ad Astra」はホームページを持たず、SNSなどでも情報は公開していないそうです。場所はロサンゼルスですが、いくらホームスクーリングが盛んなアメリカでも自分で学校を作ってしまう親はなかなかいないでしょうね。
「Ad Astra」の設立理由
「Ad Astra」の設立の理由について、イーロン・マスクはこう答えています。
一般的な学校がやるべきことをやっているとは思っていませんでした。
イーロン・マスク自身、学校が大嫌いだったそうです。少年時代を南アフリカで過ごしたイーロンですが、転校が多く、いじめの対象になっていました。それもかなり激しいいじめで、コンクリートの階段から突き落とされたり、ときには病院へ送られることもありました。イーロン・マスクはその時代を拷問だったと語っています。
現実から逃れるように本の世界へ入り込んでいったイーロン。朝から晩まで読書に耽る生活でした。結果的には、本から学んだ知識やビジョンが現在につながっていくわけですが、とにかくイーロンは既存の学校というシステムに不満を抱えていたそうです。学校設立の背景にイーロン・マスクの悲しい過去がうかがえますね。
「Ad Astra」の特徴
さて、イーロン・マスクは「Ad Astra」の特徴を2つあげています。1つは複数の学年が存在しないこと。
複数の学年はありません。1年生、2年生、3年生といったものはないのです。
同時にすべての子どもたちが同じ学年に通えるようにしています。国語が好きな子もいれば、算数が好きな子もいます。音楽を好きな子だって。異なった年齢の異なった能力。彼らの才能や能力にあわせて教育を提供するべきなのです。
画期的ですね。既存の学校とは大きく異なるシステムです。そして、「Ad Astra」のもう1つの特徴はシステムではなく教育の方法にあります。イーロン・マスクはこう言います。
道具ではなく、問題解決もしくは問題自体を教えることが重要です。
どういうことでしょうか。イーロン・マスクはエンジンを例にとって説明していきます。まずは、これまでの教育の方法について。
例えば、エンジンの仕組みを誰かに教えるとします。伝統的なやり方では、「まずは、ねじ回しやレンチについて詳しく教えます」となるでしょう。この方法でエンジンの仕組みを学ぶのは非常に難しい。
ところが、「Ad Astra」ではねじ回しやレンチなどの道具とエンジンを一緒に提示するそうです。
「これがエンジンです。さぁ、分解してみましょう」。ではどうやってやるか。そこで、ねじ回しが必要になります。これがねじ回しが存在する理由です。すると、非常に重要なことがおきます。それぞれの道具の関連性が明らかになるのです。
つまり、ゴールから逆算的に教えていくという方法です。学習方法について、いぜんイーロン・マスクはセマンティック・ツリー・メソッドの有効性を語っていました。セマンティック・ツリー・メソッドとは、知識(公式)の集合を1本の木のように見立て、基本的な知識(公式)となる「幹」に、「枝葉」となる知識(公式)を付け加えていくという方法です。瑣末な事象にとらわれて本質を見失わないようすることが重要なのですね。
「Ad Astra」で採用されている教育の方法にも同じ姿勢が見られます。ゴール(問題解決や問題自体)を最初に教えて、「幹」をしっかりさせる。それから、それぞれの道具を「枝葉」として教えていく。これによって、知識が体系化して情報が有機的につながり、生徒たちはゴールとなる問題解決能力を身につけることができます。
まとめ
いぜん紹介させていただいたHank Greenは言います。
今この瞬間にも、私たちは数々の問題を生み出し、解決しています。それは過去のどの時点よりも速いスピードでおこなわれています。だから、あなたの仕事(誰かがあなたに人間として頼める唯一のこと)は、自分が生み出す問題よりも多くの問題を解決することです。
そして、個人個人の問題解決というアクションの集合が世界の形を決めていくということでした。より良い世界、おもしろい世界にするための教育を提供する。これがイーロン・マスクが学校を設立した理由でしょう。
参考
http://www.cse.chalmers.se/edu/year/2014/course/DAT060/tree.pdf#search=%27semantic+tree%27