イーロン・マスクのすすめ

2015年、イーロン・マスクが世界に与えた影響は計り知れない

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イーロン・マスクという個人が存在するかしないかで、世界はその姿を大きく変えたでしょう。それぐらいこの男の影響力はすさまじい。2015年もイーロン・マスクは世界に多大な影響を与えつづけました。そこで、2015年にイーロン・マスクがおこした様々な変化の中から代表的なものをとりあげて4つの分野でまとめてみました。




1.エネルギー

2015年4月、テスラは新製品としてPowerwallとPowerpackという2つのバッテリーを発表。2003年にイーロン・マスクが設立した電気自動車メーカーは、12年の歳月を経てついにエネルギー事業に乗りだしたのです。本格的なコストダウンはギガファクトリー稼働による大量生産を待ちますが、テスラのバッテリーはすでに既存のバッテリーよりも安価でスタイリッシュ。バッテリーの概念を覆すような製品です。

イーロン・マスク化石燃料に依存した社会を変えようとしています。化石燃料の埋蔵量にはリミットがあり、化石燃料の燃焼は温室効果ガスを発生させる。枯渇と地球温暖化、この2つのリスクを抱えた状態をイーロン・マスクは「狂った実験」と呼び、化石燃料依存からの脱却へむけて進みはじめました。

イーロン・マスクが会長を務めるソーラーシティ社はソーラーパネルを全米に普及させています。そして、太陽光発電の最大の弱点であった蓄電をテスラが補うことになりました。テスラに乗ったドライバーが太陽光発電スーパーチャージャーで充電し、ソーラーパネルを設置している家庭や事業者がテスラのバッテリーで蓄電する。世界のエネルギー構造は変わり、化石燃料依存からの脱却へむかうことでしょう。

2.交通機関

2015年9月、テスラはSUVタイプのモデルXの販売を開始。モデルXは、真上に自動開閉する「ファルコンウィングドア」をはじめ、ドライバーが接近すると開くフロントドアなど、テスラの技術の粋をあつめた自動車です。5人の子どもの父親であるイーロン・マスクが、家族でつかえるSUVタイプの電気自動車を世に送りだし、電気自動車のさらなる普及を狙います。

そして、2015年10月、テスラのモデルSに自動運転機能が追加されました。ソフトウェアアップデートで追加されたこの自動運転機能はあくまでもベータ版。テスラは自動運転機能による事故について責任を負わないと宣言しています。にもかかわらず、すでに多くの人々がモデルSの自動運転機能を使用していることから、その品質の高さがうかがえます。

現在、最大の交通機関はガソリン車です。その名のとおり、ガソリンつまり化石燃料が使用されます。そして、化石燃料に依存するのはリスクが高い。イーロン・マスクが導きだした解決策は電気自動車の普及でした。

12年前の2003年、イーロン・マスク電気自動車メーカーであるテスラを設立。テスラはスポーツカータイプの電気自動車ロードスターでデビューし、セダンタイプのモデルSで最高の安全性評価、レビュー雑誌Consumer Reportsにて史上最高の評価を得るなど、その地位を確固たるものにしました。

さらなる進化を遂げたテスラですが、とくに注目すべきは自動運転。イーロン・マスクTwitterで自動運転のエンジニアを募集するなど、自動運転技術の発展を最優先事項としています。自動運転によって事故が減ったり便利になったりと様々なメリットがありますが、自動運転の利点はそれだけではありません。自動運転技術の発展はじつは電気自動車の普及にもつながるのです。地球上の自動車の総数が減り、相対的に電気自動車の占める割合が増えるからです。

テスラの目的は「持続可能な交通機関の到来を早めること」(accelerate the advent of sustainable transport)。2015年、モデルXの販売と自動運転機能の追加によって、テスラは持続可能な交通機関つまり電気自動車の普及へむけて大きく前進しました。後を追うように他の自動車メーカーも次々に電気自動車の開発を決定。自動運転機能も含め、2015年にテスラが自動車業界に与えた影響は特筆すべきものがあります。




3.AI

2015年12月、イーロン・マスクは適切なAI(人工知能)の研究開発を目指してOpenAIという非営利の企業を発足させました。OpenAIは、イーロン・マスクとサム・アルトマン(YコンビネータのCEO)が中心となり「利益追求ではなく人類のためにデジタルな知能を発展させる」ための企業です。AIの研究開発を「悪魔を召喚しているようなもの」と表現するイーロン・マスク。人類のためにAIを正しく導く仕組みがOpenAIには備えられています。

近年、AIは著しい発展を遂げています。2013年の人工知能専門家の年次集会でおこなわれた調査によると、3分の2以上の専門家が2050年までにはAIの知能が人間と同じレベルになると予想しています。そして、AIが人間レベルの知能を備えるといわゆる「知能の爆発」がおきます。人間が人間レベルのAIを開発できるということは、その人間レベルに到達したAIも同じことができるはず。AIが新しい(改善された)AIを開発するスピードは、生物として様々な制約をもつ人間をはるかに凌駕するでしょう。

人工知能の父と呼ばれたアラン・チューリングの同僚である数学者I J Goodは、万能で高度な人工知能は人類のおこなう最後の発明になるだろうと言いました。「知能の爆発」以降の発明はすべて人工知能によっておこなわれるという意味ですね。「知能の爆発」はあらゆる分野に影響を与え、社会は急激な変化を迎えます。レイ・カーツワイルはこれを「シンギュラリティー」(特異点)と呼び、シンギュラリティー以降の世界を予測することはほぼ不可能です。

これからシンギュラリティーを迎えるであろう特別な時代。AIの分野でトップを走るのはGoogleFacebookといった企業です。株式会社なのでもちろん利益追求が求められます。AIのもつ破壊力を考えると、利益追求をおこなう企業がAIの技術を独占的に保持している状況は好ましくない。人類のための健全なAIの発展のため、今後OpenAIは業界内で重要なポジションを占めていくでしょう。

4.宇宙

2015年12月、スペースXは半年ぶりの打ち上げとファルコン9ロケットの垂直着陸に成功しました。2015年の締めくくりとしては本当にドラマチックなものでした。

イーロン・マスクは人類を火星へ送るために2002年にスペースXを設立しました。火星に自立した文明を築き、人類を多惑星にまたがる種にするのです。イーロン・マスクは火星入植を「人類のバックアップをとる行為」と表現します。

生物は過去5回の大量絶滅を経験しています。地球はクラッシュしやすいHD。人類という大切なドキュメントを守るため、一刻も早く別なHDにバックアップをとることが必要です。そして、「別なHD」とは火星のことです。地球で大量絶滅が起きたとしても、火星に自立した文明が存在すれば人類滅亡は回避できるというわけですね。

人類の存続のために火星入植が必要。そして、大量の人や物を火星に届けるためにはロケットのコストを下げなければなりません。スペースXはロケットを再使用可能にすることで大幅なコストダウンを狙っています。

現在スペースXを代表するロケットはファルコン9ロケットです。2010年に打ち上げがスタートしたファルコン9は18回連続で打ち上げを成功させていました。民間企業として驚異的な成果です。しかも、再使用可能ロケットを目指して海上プラットフォームへの着陸テストも実施されていました。

ところが、2015年6月、19回目の打ち上げで悲劇がおこります。その日は奇しくもイーロン・マスクの誕生日。ファルコン9は打ち上げから139秒後に爆発してしまったのです。そのあとの半年間、スペースXは打ち上げをおこなうことができませんでした。その間にAmazonのCEOジェフ・ベゾスが設立したブルー・オリジンという企業がロケットの着陸に成功。両者の目的の違いから単純な比較ができないにもかかわらず、メディアはスペースXが先を越されたと報道しました。

そして、2015年12月、スペースXは様々な改良を施した新しいファルコン9ロケットで半年ぶりの打ち上げをおこないました。しかも、陸上への着陸も同時に目指すというとてつもないチャレンジです。通常、事故のあとの打ち上げでは安全に成功させることだけを考えます。もちろんアクシデントの発生個所は改善しますが、成功実績のある他の箇所には手を入れず、なるべくリスクを取らない。ところが、スペースXはファルコン9ロケットを大幅にアップグレードさせたうえに、いままでやったこともない陸上への着陸試験を実施したのです。人類存続のために、旧態依然としていた宇宙産業を変革するというスペースXの覚悟がこれ以上ない形で表れていました。

結果は見事なものでした。打ち上げにも成功し、搭載していた人工衛星を軌道へ乗せ、スペースXは完璧にミッションを遂行したのです。そして、役目を終えたファルコン9ロケットは地上へむかって逆噴射を開始。スペースX社員が見守るなか、ロケットの垂直着陸という歴史的偉業を達成してみせました。再使用可能ロケットへむけて、火星へむけて、スペースXは大きな一歩を踏みだしました。これは政府・民間を問わず、人類がもつ宇宙にたいするテクノロジーの素晴らしい飛躍です。




まとめ

2015年にイーロン・マスクが変化をおこした4つの分野はエネルギー、交通機関、AI、そして宇宙です。どれも人類の存続にかかわるとても重要なもの。1人の人間がこれほどまで文明の根幹部分に影響を与えるなんて信じられません。

世の中を楽しくする、または便利にする技術も大事ですが、それは人類の存続あってこそ。イーロン・マスクが世界にたいしてとてつもない影響力をもちつづけるのは、彼のテクノロジーが人類にとって決定的なものだからです。

衛星コンステレーションによる全地球的高速インターネット接続環境の提供や、新しい交通機関であるハイパーループの実現にむけた動きなど、イーロン・マスクのまわりでは他にも様々なニュースが相次いだ2015年。これだけ重要な分野に多大な影響を与えつづける人間にはなかなかお目にかかれません。これからもイーロン・マスクからは目が離せませんね。

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