イーロン・マスクのすすめ

スペースXが半年ぶりの打ち上げに成功!垂直着陸の偉業も達成!

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6月28日の打ち上げ失敗から約半年。爆発事故のあとスペースXがおこなったはじめての打ち上げが成功しました。今回の打ち上げの目的は2つ。オーブコムの衛星を軌道に乗せることと、ケープ・カナベラルへの垂直着陸です。

半年前の爆発事故によって相当プレッシャーがかかっていたはずですが、見事にスペースXは打ち上げも垂直着陸も成功させました。素晴らしい快挙です。LIVEで観てましたが着陸シーンはちょっと信じられない光景でしたね。新しい時代が開けた気がします。感動しました。

着陸シーンの動画を貼っておきます。とてつもない盛り上がりでまさに世紀の一瞬といった感じですよ。




こちらが2段目を切り離したあと無事に帰還したファルコン9ロケットです。 

スペースXのロケット打ち上げ再開

スペースXがロケット打ち上げ再開にかけた時間は約半年ですが、じつはこれはかなり早い復帰と言えるのです。

たとえば、ISSへの補給をおこなうOrbital ATK(前オービタル・サイエンシズ)社は昨年の8月に打ち上げを失敗したあと復帰に1年以上かかりました。それに、NASAスペースシャトルの事故のあとは2年間も打ち上げをおこなわなかったのです。それらの倍以上のスピードで打ち上げを再開させるあたりはさすがスペースXですね。




新しいファルコン9

今回打ち上げられたファルコン9ロケットは、6月の爆発の原因となった支柱の改善を含め、前回よりも大幅にアップグレードされているそうです。

まず、凝固点付近までサブクーリングした液体酸素の推進剤はその密度を「とてつもなく」増やして、より多くのペイロードを運べるようになり、推進力も向上しているとのこと。イーロン・マスクによると極低温の推進剤の使用は初めてだそうです。さらに、ロケット上段の面積を増やしたことにより、より多くのケロシンと液体酸素(推進剤)を積めるようになりました。そして、ロケット切り離しのシステムを変更し、電子工学的に多くの向上がみられたようです。

スペースXのウェブサイトによると、これらの変更によって海抜ゼロ地点でのファルコン9の推進力が130万ポンドから150万ポンドまで向上したそうで、イーロン・マスクは「前回のロケットよりはるかに性能が向上した」と語ります。

逆噴射による垂直着陸について

ケープ・カナベラル空軍基地への逆噴射による垂直着陸成功は、再使用可能ロケットの実現へむけて大きく前進したことを意味します。そして、ロケット再使用が可能になれば、打ち上げコストを大幅に下げることができますし、打ち上げペースを上げることもできます。

ファルコン9の打ち上げには約72億円かかっていますが、打ち上げのあとロケットは廃棄されていました。他のロケットに比べると驚くほど安い打ち上げコストですが、それでも使い捨てはもったいない。そのうち燃料費は約2500万円なので、割合的には微々たるものですよね。ロケット再使用が可能になれば打ち上げにかかるコストはこのぐらいの燃料費(+最初の製造とメンテナンスコスト)だけで済むのです。(年間で相当な数の打ち上げをおこなわないとメンテナンスコストが割に合わなかったり、切り離しのあと打ち上げ位置まで帰ってくるための燃料のことなど考慮すべき点は残されています)

自動車や電車、飛行機などはどれも再利用可能な交通機関ですが、スペースXはファルコン9のようなロケットもそれらと同じレベルにもっていくつもりです。これは今まで誰も成し得なかったこと。

たとえば、ジェフ・ベゾスAmazonのCEO)のブルーオリジンも垂直着陸を成功させましたが、スペースXのファルコン9ロケットとブルーオリジンのニュー・シェパードロケットではその用途に違いがあります。

ファルコン9は人工衛星を軌道投入したりISSへ物資を補給したりと軌道へ到達するためのロケット。一方、ニュー・シェパードの目的は宇宙旅行なので、宇宙空間にさえ到達すれば良い。軌道に到達するのか宇宙空間に到達するのかでは距離に大きな開きがあります。

もちろん宇宙旅行のための交通機関としてロケットが再使用可能になるのはすごいことで、ブルーオリジンの成功も偉業であることは間違いありません。ただ、商業的にもっとも宇宙が利用されるのは人工衛星ISSが位置する軌道。言わば、宇宙ビジネスの主戦場です。そこへ到達できる安価な再使用可能なロケットが誕生するとなると、これはとてつもないブレークスルーですね。




火星を目指して

ロケットの逆噴射による垂直着陸はスペースXにとってもう一つの重要な意味をもちます。スペースXが目指すのは火星です。じつはスペースXは火星におけるロケット着陸を想定して、逆噴射による垂直着陸技術を導入しているのです。

というのも、火星ではスペースシャトルのような滑空による着陸ができないからです。スペースシャトルや飛行機などは翼の周りを流れる空気によって揚力を発生させる仕組みですが、揚力は大気密度と密接に関係しています。大気密度が2倍であれば揚力も2倍。大気密度が半分になれば揚力も半分になります。

で、肝心の火星の大気密度ですが、なんと地球の約80分の1しかありません。つまり、地球と同じ速度で移動するとして、翼をもつロケットや飛行機が得られる揚力も約80分の1。火星は地球の40%の重力しかありませんが、それを考慮に入れても翼で生み出される揚力ではまったく足りません。つまり、地球と火星を行き来するロケットは逆噴射による垂直着陸能力が求められるということです。

先日、イーロン・マスクはAGU(American Geophysical Union)で「地球の歴史において、はじめて他の惑星へ生命の領域を拡張するチャンスが訪れた」と語りました。そして、逆噴射によるロケットの垂直着陸は生命の領域を拡張するために必要な技術。スペースXはその大きな目標にむけての大きな一歩を踏み出したわけですね。本当にすごい偉業だと思います。

参考

www.theverge.com

www.usatoday.com

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