イーロン・マスクのすすめ

イーロン・マスクが化石燃料依存からの脱却をすすめる2つの理由

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イーロン・マスクテスラ電気自動車とバッテリー、ソーラーシティで太陽光パネルを普及させている目的は、人類を化石燃料依存状態から脱却させるためです。

そこで、今回はその理由を探っていきます。今回の記事を通して、イーロン・マスクの行動の背後にある論理に多少なりとも近づくことができればと思います。そして、今後の彼の行動を見ていくうえで必要となる知識の幹ができあがれば最高ですね。




イーロン・マスク化石燃料依存からの脱却をすすめる2つの理由

 イーロン・マスク化石燃料依存からの脱却をすすめる理由。いきなりですが、答えから先にお伝えします。答えは以下の2つです。

 1.このまま化石燃料に依存し続けると化石燃料が枯渇してしまうから

 2.このまま化石燃料に依存し続けると地球環境が一変するから

それぞれの理由について触れたイーロン・マスクのコメントをご紹介しておきます。

1.化石燃料の枯渇

もし石油に依存した交通機関を脱却できなければ、石油が枯渇したとき、経済は崩壊して社会は終わるでしょう。

2.地球環境の変化

石油から脱却することが避けられない帰結なら、なぜ先カンブリア時代から埋蔵されてきた膨大な量のCO2を放出し、大気や海洋の化学成分を変化させようなどといった狂った実験を続けるのでしょうか。

Elon Musk: Burning Fossil Fuels Is the ‘Dumbest Experiment in History, By Far’ | Motherboard

では、これから以上の2つの理由に潜む理屈に迫っていきましょう。




化石燃料の枯渇

まずは化石燃料の枯渇からいきたいと思います。あらかじめお伝えしておきますが、こちらにはあまり文量を割きません。比較的わかりやすい理屈で理解できるからです。なので、今回のメインディッシュは地球環境の変化の方です。ということで、簡単に済ませてしまいましょう。

有機起源説と無機起源説

化石燃料の枯渇についての議論で重要なのは、化石燃料の生成メカニズムです。つまり、化石燃料(石油)ができる仕組みです。

石油生成の仕組みについては現在2つの学説があります。有機起源説と無機起源説です。有機起源説は石油が生物由来だとする説。一般的に受け入れられている学説はこちらですね。そして、無機起源説は石油は生物ではなく炭化水素から生成されたという説です。

イーロン・マスクは有機起原説の立場をとっています。なので、このブログも有機起原説に依拠して話を展開していきます。イーロン・マスクの考えを探るのがこのブログの目的だからです。

じつは、有機起原説の立場から化石燃料を論じると、1つの明確な結論がでてきます。それは遅かれ早かれ化石燃料は枯渇するということ。化石燃料とは何かを考えればその答えに行き着きます。

有機起源説における化石燃料

化石燃料とは太古の生物の残骸です。もっとも古い化石燃料先カンブリア時代の生物の化石。まだ陸上に動物も植物もいなかった時代です。 先カンブリア時代の生物の化石と言われてもピンとこないかと思いますが、原始的な生命がようやく誕生したのが先カンブリア時代です。約25億年ほども昔の話です。

ちなみに、化石燃料で一番多いのが石炭紀(約3億年前)に生きていた植物、動物、藻の化石です。

彼らは数億年、数十億年を経て、強烈な熱と圧力の下でエネルギーがぎっしり詰まった固体、液体、気体へと変化しました。「石炭」、「石油」、「天然ガス」です。これらを総称して化石燃料と呼びます。

化石燃料を燃やすと膨大なエネルギーが得られるので、燃料としては最適でした。産業革命以降、人類は「石炭」、「石油」、「天然ガス」といった化石燃料を燃やすことで文明を発展させていきます。

化石燃料が枯渇する理由

このように、化石燃料は数億年から数十億年もかけて生成されてきたものです。そして、現在、僕たちは地面を掘り起こし、すさまじい勢いで化石燃料を採掘しています。

化石燃料(石油)が採掘できるところを油田と言いますが、実際に枯渇した油田はたくさんあります。たとえば、新潟県にあった「新津油田」は日本でもっとも石油が取れた油田でしたが、産油量の減少によって平成8年に採掘が終了しました。枯渇した油田は世界中にたくさんあり、油田の寿命は20~30年と言われています。

世界全体の可採埋蔵量があと何年残されているか等で様々な議論が交わされています。しかし、生成に途方も無い時間がかかっているものを、ものすごいスピードで消費しているということは、いつか枯渇するか、もしくは採掘に採算が合わなくなってしまうのは目に見えてますね。

有機起源説からこの結論は避けられません。これが有機起原説から導かれる答えです。

まとめ

以上のように、イーロン・マスクは有機起源説をとっているので、化石燃料の枯渇は遅かれ早かれ避けられないという結論になるのは当然です。

ちなみに、無機起源説に立つと化石燃料の枯渇の心配ないそうです。無機起源説では、地球が誕生したときの大気に含まれていた大量の炭化水素が石油になったと考えるからで、炭化水素が地球内部で高温・高圧の状態に置かれることで石油に変質するとのこと。採掘技術次第で世界中のどこでも石油を採掘できるので、枯渇のリスクはほぼ考慮しなくて良いようです。真偽はさておき、おもしろい意見ですね。

短いですが、化石燃料の枯渇についてはこのくらいにします。

化石燃料の枯渇後、どのような世界が待っているのかは正確な予想は難しいでしょう。イーロン・マスクが言うように、経済が崩壊して社会が終りを迎えるといったところですかね。悪い未来には違いありません。




地球環境の変化

さて、ここからが今回の記事の目玉です。

化石燃料の消費による地球環境の変化については、あまりにもたくさんの意見があります。多くの人たちが、多くの理由で、多くのことを語る。自分が語っている内容を理解している人もいれば、理解せずに特定の利益のために発言をする人もいます。なかには地球温暖化自体を否定する人だっています。

そこで、いったん人々の意見というものを脇において、事実と原理だけを眺めてみましょう。世の中に出回っている様々な意見はこれから見ていく事実と原理をベースにしています。つまり、イーロン・マスクがいつも言っている第一原理に近いところをご説明するわけです。

これもイーロン・マスクが言っていることですが、第一原理に近づこうとすればするほど、精神的エネルギーを使います。僕も今回の記事のためにいろいろ調べましたが、とても疲れました。ただ、できるだけわかりやすく簡潔に書いたつもりなので、少々長くなりますが辛抱強くおつきあいください。

これからご説明するロジックは以下ですが、このロジックを展開する上で1つのルールを設けました。それは事実と原理だけで構成すること。つまり、人々の意見や予測というものを排除しているわけです。これはできるだけ第一原理に近づくために必要なことですのでご了承を。

1.化石燃料を燃やすと二酸化炭素が放出される

2.大気中の二酸化炭素の濃度は増加している

3.二酸化炭素温室効果ガスである

4.大気中の温室効果ガスの濃度が変わると気温が変動する

5.気温が変動すると地球の環境は一変する

では、さっそくやりましょう。

1,化石燃料を燃やすと二酸化炭素が放出される

化石燃料の燃焼は、結局のところ、光合成の逆再生と言えます。

植物は大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収して太陽のエネルギーを使い、炭素(C)と酸素(O2)に分解します。ものすごく簡略化した説明ですが、これを光合成と言います。光合成によって分解された炭素は植物の体内に留まり、酸素は排出されます。

化石燃料の燃焼させることで、光合成と逆の化学反応がおきます。植物が蓄えてきた炭素を大気中の酸素と結合させる。炭素(C)と酸素(O2)が結びついて二酸化炭素(CO2)の誕生ですね。

炭素と酸素を結合させるにはエネルギーが必要なので、燃焼つまり「火」を使うわけです。

地球の炭素は生物を含め様々な媒体を通して循環します。このような炭素の循環を、炭素循環と呼びます。ここが重要な点ですが、化石燃料は炭素循環からこぼれ落ちた炭素の塊なのです。

たとえば、現存する動植物を燃やしてもあまり大気中の二酸化炭素増加には貢献しません。なぜなら、生物は燃焼によらずとも、微生物に分解される過程で炭素を大気に戻しているからです。

菌類やバクテリアなどの微生物は、動植物を構成する物質を分解します。生物を構成しているのは炭素ですので、分解の過程で炭素が出てきます。この炭素を(酸素がある場合は)二酸化炭素に変えるのです。

燃やすか腐るかの違い。タイミングの問題です。比較的短いスパンで炭素が循環するということですね。

化石燃料とは腐敗を逃れた生物の死骸です。炭素を大気へ戻すことなく、炭素を保持したままです。つまり、炭素循環からこぼれ落ちた炭素だということです。

2.大気中の二酸化炭素の濃度は増加している

炭素循環からこぼれ落ちた炭素である化石燃料は膨大な量存在しています。

たとえば、海洋に溶けている炭素は39兆トンです。これが地球の炭素貯蔵量でもっとも多い。そして、陸上の有機炭素は2兆トン。大気中の二酸化炭素は7500億トンと続きます。では、化石燃料の炭素はどのくらいかと言うと、なんと5~10兆トンもあるのです。陸上の有機炭素と大気中の二酸化炭素を足したよりもはるかに多い炭素貯蔵量です。

膨大な量の化石燃料の燃焼は、膨大な量の二酸化炭素の排出を意味します。つまり、炭素循環からこぼれた極めて多くの炭素がものすごい勢いで大気へ戻っていくということです。

ここらへんは大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度変化を表すグラフを見れば一目瞭然です。イーロン・マスクテスラのバッテリーを発表するときにも紹介していたキーリング曲線です。

キーリング曲線によると、1959年の大気中の二酸化炭素平均濃度は316ppmでした。しかし、2012年には394ppmに達したそうです。これは、ここ数十年で二酸化炭素濃度が急上昇していることを意味します。地球の歴史上、これほどの二酸化炭素濃度の急上昇は非常に稀なことです。

3.二酸化炭素温室効果ガスである

温室効果ガス。皆さん耳にされたことがあるでしょう。

温室効果とは大気が熱を吸収することです。つまり、熱を吸収する気体(ガス)のことを温室効果ガスと呼びます。

大気が吸収する熱とは赤外線のことです。そして、赤外線は光(可視光線)と同じく電磁波の一種です。いぜんこのブログでも扱いましたが、光などの電磁波は波の性質を持っています。これを頭に入れて次に進みましょう。

熱を吸収するということは赤外線を吸収するということ。そして、赤外線は波です。つまり、赤外線を吸収するとは、赤外線の波と共鳴するということです。赤外線と共鳴する気体が温室効果ガスなのです。

赤外線と共鳴するとはどういうことでしょうか。

気体を拡大していくと分子に行き着きます。気体を構成するこれらの分子を気体分子と呼びます。そして、二酸化炭素の気体分子は炭素原子と酸素原子がくっついてできています。CとO2でCO2ですね。炭素原子は電気的にプラスで、酸素原子は電気的にマイナス。このような気体分子はプラスとマイナスの中心が変動するタイプの振動運動をおこなっています。

二酸化炭素の気体分子の振動運動は、赤外線の波と共鳴します。そして、赤外線との共鳴で分子振動が激しくなった二酸化炭素は赤外線を放出しながら元の振動状態へと戻っていきます。つまり、熱を吸収して、熱を発するわけです。これが赤外線との共鳴するということです。

地球の大気の大部分は窒素と酸素ですが、窒素の気体分子も酸素の気体分子もそれぞれ同じ炭素原子、酸素原子からできているため、電気的なプラスとマイナスの中心が変動しません。赤外線の波と共鳴しないのです。

つまり、二酸化炭素は赤外線と共鳴するので温室効果ガス。窒素や酸素は赤外線と共鳴しないので温室効果ガスではないということです。

4.大気中の温室効果ガスの濃度が変わると気温が変動する

温暖化の原因は、大気中の温室効果ガスが増えているからです。

熱の根源は太陽で、太陽からたくさんの赤外線が地球に降り注いでいます。そして、太陽から届いた赤外線は地表を温めます。温まった地表から放出された赤外線は温室効果ガスに吸収される。そして、温まった温室効果ガスは赤外線を放出します。つまり、地表→大気→地表→大気といった赤外線の往復が生じるのです。赤外線が往復するということは、熱がこもるということ。これが温室効果ガスによる気温の上昇の理屈です。

温室効果は簡単な実験でいつでも確かめることができます。たとえば、ふつうの空気を入れたペットボトルと二酸化炭素を入れたペットボトルで温度変化を比較する実験。両者を60度のお湯に浸したあと常温に戻るまでの温度変化を比較すると、5分で2度の差ができます。二酸化炭素入りのペットボトルのほうが冷えにくく、ふつうの空気入りのペットボトルのほうが早く冷える。このようにして両者に温度差ができたわけです。

では、地球規模で温室効果は働くのでしょうか。

これは他の星を見てみるとわかりやすい。たとえば、金星を例にとりましょう。金星には二酸化炭素を主成分とした大気が存在します。膨大な量の二酸化炭素によって温室効果が生じていて、地表温度の平均で464度もあります。

水星のほうが太陽に近いのですが、金星は水星よりも温度が高いのです。水星とくらべて金星は太陽からの距離が倍もあり、太陽光の照射は水星の75%にもかかわらず、金星は水星よりも暑い星。これは金星のCO2がもたらす温室効果によるものです。

過去の地球を振り返ってみても温室効果は確認できます。地球に恐竜がいた時代は大気中の二酸化炭素濃度が2000ppmもありました。活発な火山活動の影響です。上述のとおり、2012年の二酸化炭素濃度は394ppmなので、非常に二酸化炭素濃度が高かった時代と言えます。そして、その時代の気温は現代よりも6~10度も高かったのです。

このように、地球規模でも温室効果が働くことがわかりますね。

5.気温が変動すると地球の環境は一変する

最後に、どのくらいの気温の変動で、どのくらい環境の変化が起きるのかを見てみましょう。過去の地球を振り返って簡単に確認するだけです。

1億年前、地球の覇者は恐竜でした。白亜紀と呼ばれる時代です。火山活動が活発化していた時代でもあり、噴煙に含まれる二酸化炭素によって大気中の二酸化炭素の割合が増えていました。前述しましたが、地球の気温は今より6~10度高かったのです。

では、白亜紀の地球環境はどうだったのかというと、北極や南極にヤシの木が育ち、氷河や氷床はありませんでした。海水の水位は今より200メートル以上も高く、白亜紀の後期には、現在の陸地面積の3分の1以上が海に沈んでいました。

これが6~10度の気温上昇で起こり得る地球環境の変化量です。少なくとも人間視点で見れば、わずか数度の温度の上昇で地球環境は一変するということです。

結論

ここでもう1度今回のロジックを見てみましょう。

1.化石燃料を燃やすと二酸化炭素が放出される

2.大気中の二酸化炭素の濃度は増加している

3.二酸化炭素温室効果ガスである

4.大気中の温室効果ガスの濃度が変わると気温が変動する

5.気温が変動すると②地球の環境は一変する

ちょっと長い論理なので間を省略するとこうなります。

化石燃料を燃やすと②地球の環境は一変する

原因と結果が明確になっておもしろいですね。さて、以上の結論を踏まえて、まとめに入ります。ここからは事実と原理だけルールを外します。

まとめ

人類が化石燃料を大量に消費し始めたのは産業革命以降です。そして、産業革命以降に地球の温度は0.8度上昇しているというのが大方の見方です。

ここ20年ほど、世界各国の努力目標は地球温暖化を2度の上昇までに留めることで合意しています。ということは、努力しない限り、地球の温度は2度以上上昇すると考えられているのです。

このあたりは様々な意見がありますが、僕たちがこのままのペースで化石燃料を燃やし続けると、少なくとも4度、最大12度まで気温が上昇すると言われています。今より6~10度高かった白亜紀の環境を思い出してください。地球環境は一変しますね。

地球環境が一変したらどういう結果になるのか正確には予測できません。不確定要素が多くて意見も様々です。化石燃料の枯渇についても同じことが言えます。ただ、イーロン・マスク化石燃料時代の引き伸ばしを、「歴史上、もっとも愚かな実験」と切り捨てます。

海洋や大気を構成する物理的な化学成分の変化が大きいほど、長期的な変化も大きいものになります。いつか化石燃料が枯渇することを考えてください。どのような悪い結果が出るのか確認してみようといった愚かな実験を続ける理由は何でしょう。

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では、この愚かな実験をストップするにはどうすればいいのでしょうか。答えはもう出ています。化石燃料を燃やすと②地球の環境は一変する。であれば、原因である化石燃料を燃やすことを阻止すればいいのです。

イーロン・マスクテスラとソーラーシティでやっていることはまさにこの原因を潰すことです。詳しくはまた今度やりますが、おもに化石燃料は自動車と発電に使われています。そこで、イーロン・マスク電気自動車、バッテリーそして太陽光パネルという製品を普及させることで化石燃料依存からの脱却を図っているわけです。

以上、イーロン・マスク化石燃料依存からの脱却をすすめる2つの理由でした。イーロン・マスクの行動の背後にある論理に少しでも近づけ、これから彼の行動を見ていくうえで必要となる知識の幹ができたなら幸いです。

参考

waitbutwhy.com

motherboard.vice.com

www.geocraft.com

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